「ふわふわの中に、ひんやりのしっぽ」
大阪市西成区の住宅街にある、無人の小さなコインランドリー。
今日は朝から快晴で、気温はすでに30度を超えていました。
お昼前、近所に住む主婦・小柳さんが洗濯物を取りに行くと、乾燥機の扉が少し開いていて、誰かが使い忘れたのかと思ったそうです。
けれど中をのぞいて、思わず声が出ました。
中にいたのは、茶トラの猫。
洗い立てのタオルの山の上にちょこんと座り、目を細めてうとうとしていたのです。
「えっ……あんた、暑くないん!?」と思わず笑ってしまったという小柳さん。
猫はくるっと丸まり、ちょっとだけ尻尾を外に出して風を感じている様子。
近くのクリーニング店の男性が言うには、
「その子、ランドリーの常連ですよ。冷房ないから、日陰で布の匂いが一番好きなんちゃいますかね」とのこと。
店内には誰が置いたのか、小さな張り紙が一枚。
「ねこがいますが、機械は使えます。静かに見守ってくださいね。」
午後、猫は乾燥機の上からひょいっと降りて、すっと扉の隙間から外へ。
外は真夏の強い日差し。でも、そのしっぽは、乾いたタオルの香りがしていたとか。
ふわふわとした布と、ちょっとしたやさしさがつくる「ひと休みの居場所」。
街の暑さの中に、静かな“ぬくもり”がそっと息づいていました。