ポストに届いたのは、手紙と“あの子”の無事でした
神奈川県鎌倉市。
台風の接近で、朝から横殴りの雨と強い風が吹きつける月曜日。
町は静かで、いつもの通勤・通学の足音すら聞こえません。
そんな中、ご高齢の女性・田代さん(82歳)は、早朝6時、玄関の郵便受けに気づきました。
風の音が止んだ一瞬に、カタンと何かが入った気配。
「新聞かと思ったら、ぬれてなくて、あれ?」と不思議に思い、扉を開けると――
中にいたのは、小さな茶トラの子猫。
近所で1週間前から目撃されていた迷子の子で、どこに行ったのか心配されていた“チビくん”でした。
濡れた毛を丸めて、郵便受けの内側にぎゅっと収まっていたその姿に、田代さんは思わず「無事でよかったね」と声をかけたそうです。
チビくんは以前、田代さんが道端で声をかけたときに、一度だけ「ニャッ」と返事をしたことがありました。
その記憶があったのか、まるで“ここなら平気”とわかっていたように、まっすぐ来たのでしょう。
現在チビくんは、田代さん宅の玄関内でタオルにくるまれて眠っています。
「台風が過ぎたら、家族になろうかね」と田代さんは小さく笑いました。
今日、郵便受けに届いたのは、手紙ではなく――
命と、あたたかい縁でした。