「洗濯かご、占拠中。」
——日曜午後の“動かない同居人”たち——
愛知県春日井市に暮らす川原さん一家の洗面所では、最近、洗濯かごが“ある理由”で使えないことが増えています。
その理由は、2匹のミドリガメ、名前は「のん」と「せっけん」。
普段はベランダの水槽で過ごしている2匹ですが、夏の暑さがピークを迎える午後になると、家の中の風通しのいい場所——つまり洗面所の洗濯かごに勝手に入り込み、スヤスヤと昼寝を始めるのだそうです。
「何がそんなに快適なのか不思議なんですけど……かごの網目の下から風が通って気持ちいいみたい」と語るのは、小学6年生の次男・亮くん。
脱衣所に入るたびに、のんとせっけんがのびきった足で静かにくつろいでいるのを見ると、「今日は洗濯はちょっと後でいいか」と家族みんなが譲るようになりました。
最初は気をつけながらタオルで日よけを作ったり、水分補給のタイミングを見計らったりと、慎重に見守っていた家族も、今では完全に「彼ら優先」。
日曜の午後、洗濯かごに居座るカメたちを見ながら、川原さん一家はそれぞれ好きなことをして過ごします。
うちわをあおぐお母さん、アイスを食べる子どもたち、冷風の届くところでひっくり返るネコ。
その中心で微動だにしない、2匹のカメ。
「たぶん、今日もいちばんエアコンの風が気持ちいい場所を見つけたんだと思います」
家族の誰かが笑いながら言いました。