ベンチに置かれた“ちいさな代わり”――帰りを待つ猫のために
京都府宇治市、住宅街の小さな公園に設置された、屋根つきのベンチ。
連日の雨風で、人の姿はまばら。けれど、毎朝そこに現れる猫がいます。
名前はありませんが、地元の人たちは**「銀ちゃん」**と呼んでいます。
やや長毛で、背中に銀色がかった模様をもつこの猫は、近くのアパートに住んでいた高齢の女性・高原さんが、毎朝おやつを持って通っていた“ベンチの友だち”でした。
けれど高原さんは、体調を崩してこの春から入院。
それ以来、銀ちゃんは雨の日も風の日も、朝7時になるとベンチのそばでじっと待っているのです。
そんな今朝、風が特に強まる中で、ベンチにぬいぐるみが置かれているのが見つかりました。
ぬいぐるみは、銀ちゃんにそっくりな白とグレーの猫型。
手書きで「たかはらさんは いま びょういんにいます。またかならず あいにきます」と書かれた小さな紙が結ばれていました。
誰が置いたのかはわかりません。
でも、銀ちゃんはそのぬいぐるみにそっと頭を寄せて、
そのまま横に並んで、丸くなって眠っていたそうです。
通りかかったご近所さんは、「見ているこちらが泣けてしまった。ちゃんと伝わってる気がして…」と話してくれました。
“会えない時間”をつなぐのは、言葉ではなく、姿でもなく、
心の重なりなのかもしれません。