「通学路の“ふみきり番猫”」
夏休みに入ったばかりの今朝、
通学路の踏切前に、なじみの顔がちょこんと座っていました。
それは、このあたりでは知られた存在、「ふみきり番猫」こと黒白の猫・クロちゃん。
毎朝通学する子どもたちを見送っていた彼(彼女?)ですが、
夏休みに入ってからは姿が見えず、「どこか行っちゃったのかな?」と心配されていました。
ところが今朝、なぜか誰も通らないはずの時間にふらりと現れ、
いつものように踏切の前にちょこんと座り、警報が鳴るのをじっと待っていたのです。
「まるで“勤務中”みたいに、ちゃんと列車を見送ってましたよ」
と話してくれたのは、駅近くの八百屋さん。
「子どもらは来ないけど、電車はちゃんと通るって、わかってるのかもなぁ」
と、笑ってバナナを袋に詰めてくれました。
クロちゃんは電車が通り過ぎると、立ち上がってのびをして、近くの木陰へ。
そこには誰かが用意した小さな水皿と段ボールがあり、うちわが立てかけられていました。
誰が置いたのかは、きっと街の誰か。
そしてクロちゃんの見送りも、きっと誰かが待っていた。
そんなふうに、日常の一コマにひっそりと生きる“役割”と“やさしさ”がある。
夏のはじまりの、静かなお仕事風景でした。